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第8回ネーム大賞

2次審査員作品講評 その1

古泉智浩・テキスト講評

※講評はいただいた作品のみとなっております。何卒ご了承ください。

 

B-073 『ペットの気持ちなどわかってたまるか』大路大三朗
 人類と宇宙人との戦争を大変大きなスケールのテーマを、個の視線で状況を分かりやすく非常にスリリングに描いており大変な力量を感じました。とても面白かったです。宇宙人のデザインが不気味でよかったです。結末は感動しました。人類が勝って安心しました。

A-063 『さよなら、僕のカタルシス』八百万峯子
 行動と内面の描写で、こちらの受け止め方が二転三転するような、いい意味で翻弄され、とても面白かったです。お互いただの被害者や加害者でないところが素晴らしいです。もしこの二人が現実にいるとしたら全くかかわりたくないのですが、目が離せないような存在感がありました。

A-040 『女将の綱取り』原作/木戸塚イジフ 作画/ぷりっころん
 相撲経験のない女将が仕切って力士を育成することに嘘くささがまったくなく、すっと腑に落ちました。また試合の描写もスリリングで迫力があり、ロジカルでとても面白かったです。お父さんの手紙にとても感動しました。登場人物も魅力的で、ここから先の物語も読んでみたいです。

E-049 『Ghost Piano』近藤笑真
 20世紀初頭を舞台で音楽を描くという挑戦にまず頭が下がります。バッハがピアノを想定していないエピソードがすごくいい。ただ冒頭の印象的な幽霊がなんの伏線にもなっていなかったのがちょっと残念でした。主人公に霊視の能力があるのか、女の子に守護霊的な何かがあるのかと思って読んでしまいました。

E-059 『蜘蛛女 第一話』まさかき
 不気味で怪しくスリリングで卑猥な描写に引き込まれました。とても面白かったです。第1話で評価の対象になるのかなと思っていたら、充分成立していました。他のエピソードも読んでみたいです。

D-051 『死記』ヲヲクラゲ
 本棚に日記をずらっと並べているのは10代の男子としてあり得ないと思いました。また、お父さんが息子に嫌われていることを極度に心配していますが、嫌われていたとしても息子は息子として自分が子供に抱く愛情は揺らがないと思います。そんな風に思いながら読んだのですが、あまりに素晴らしい日記で涙が出てしまいました。

B-022 『山の上の学校には何もない』ケロスケ
 女の子に化けてどう見分けるかというクライマックスが面白かったです。きちんと筋を通して見事見分けるところがよかったです。

B-050 『ゴールド・ラッシュ!』いなずまたかし
 バトミントンには興味がなかったのですが、野球で鍛えたリストがそのまま活かされるというところがよかったです。ただ、試合の描写は単調に感じました。実際のバトミントンがそうなのかもしれませんが、息を呑むようなスリルを感じたかったです。

D-054 『夢虫に』さねすえ
 投扇興のやりとりが面白かったです。高校生に63万円請求する芸者はどうかと思いますし、お父さんを殴っただけで店を壊したのかどうか描写がなかったので唐突な感じがしました。また、ラスト1投が結局なかったのも釈然としませんでした。芸者が高校生を責めるわけですが、どっちもどっちで、大人としてきちんと高校生を諌めている感じで読みたかったです。

E-042 『裁判マン』あまの
 裁判制度が持つ仕組みとしてドライであることが描かれており、またそれに対する問題提起もよかったです。

 

 

鍋島雅治・テキスト講評

 

A-013 にんじ田んー子のララバイ 久米こめ 8点

寂しい子ども、つらい目にあっている子供が見る「イマージナリーフレンド」をテーマにした作品は実は、あまたありますが、これは中でも良い出来ですね。主人公の成長と、喪失と再生までちゃんと描いている希有な例だと思います。
家族愛で、承認欲求を満たされ、描かなくなった小説家というのもなんとなくいい感じ。
そして今度は、自分のためではなく、子供や他者のためにまた書き出す。
承認欲求や、ルサンチマンだけでは書けなくなるが違うモチベーションを得て再生する。
そして大人になったそのとき、人は心の旧友を失わなければならない。という深いテーマが描かれています。
なんというかぎゅっと凝縮した、のび太が卒業する「ドラえもん」ループしない、あたるがラムと家庭を持ち子供を持つ「うる星やつら」とでもいうのでしょうか、いい短編で分量も、ちょうど良いと思います。名作です。
 

A-040 女将の綱取り 原作/木戸塚イジフ 作画/ぷりっころん 8点

設定、着眼ともに面白い。
しかも「デブが嫌い」なのが良いし、アイディアや説得力もある。
絵も構成もすべてが「大変良くできていて申し分ない」
もう即連載、即ドラマ化が約束されているような素材です。あとは運次第。
すぐにどこかに持ち込みましょう。
ただあえてなんくせをつけるとしたら、あまりにも「よく出来ていて」「バランスが良すぎる」ところ。けしてキャラも悪くないのですが、そのゆがみのなさのせいで、キャラが薄く感じます。女将のドSっぷりや、旦那のヘタレっぷりや、藤原君の破天荒ぶりをもっと強調するか、とりあえずの第一話なので、女将のドSっぷりをもっともっと強調しても良かったかもしれません。女将業に就くためだけに好きでもない相手と結婚するのもちょっと抵抗感があるので、本当は好きでドSなだけ。とか、Mとして好きで旦那との関係はそこでけっこう成立しているとか。少しだけつけぬけた馬鹿さがあっても良かったかも。
そこが少しだけくいたりませんでした。「デブが嫌い」の部分の笑えるシーンは、センスあるので本当は、出来ると思います。少し遊んでいいかも。
ともあれ、本当によく出来ていて完成度ではピカイチだと思います。


B-073 ペットの気持ちなどわかってたまるか 大路大三朗 8点

SF大作ですねぇ。これは怖いです。タイトルが一見可愛いのに。読み応えありました。
最後の「騎兵隊オチ」(絶体絶命に援軍が来てハッピーエンド)は今となればちょっとご都合主義な感じもしますが、主人公たちは精一杯やってますし、ハリウッドでも何でも定番の展開なので良いでしょう。僕も他に思いつきません、しかしもう少し絶望感と、タメとかアガキがあってもいいかもしれません。「トイストーリー3」の「騎兵隊」というか「伏兵」オチで、「そうか、おまえらがまだいたか!」的な。アレはネタではなく演出の勝利ですからね。
読後感も良く、救出の後のニュースのヘッドラインも、シニカルで遊びとして気が利いています。しかしラストのコマのヘリ舐めの俯瞰はどうでしょうか。
ちょっと恥ずかしさが出てあえて外したのかもしれませんが、あそこは夫婦にぐっとよるか、まだ見ぬ娘によるか、ベタでも親娘で、抱き合わせるかしたほうが。
「カタルシスはあえてベタに」。が良いと思うのですが。


C-026 骸骨剣士 キムチ&ナムル 8点

画力はおいておき、少年漫画的な王道のドラマで長い話を一気に読んでしまいました。
ストーリー、設定、バランス、構成ともに文句なしだと思います。
すごく普通に読者として楽しませていただきました。
何よりもキャラクターがみんないい。キャラが作者の駒として存在し動かされているのではなく、多彩なキャラがそれぞれの人生を賢明に生きている感じがしました
悪人が一名以外は、「ただの悪役」になっていないし「それぞれの願い。大事にしたい物」があって「対立」しているのも素晴らしいし、それがちゃんと納得する形で帰着しているのもいいと思います。
ただ、あまりに誰もが、ハッピーエンドなので骸骨戦士もしくはその刀くらいは、もとに戻らなくてもいいんじゃないでしょうか。
彼は「村人としての別の生き方」が与えられたのですから、何か代わりに失う物、あきらめる物があっても良いと思います。その方が余韻が深くなるかもです。
欲としては前半もっと早くに「怪物」たちが人間たちに迫害される「フリークス」「マイノリティ」としての立場や悲しみが描かれていたら、より後のエピソード(女の子が、それでもかくまう勇気など)が感動的だったかな。と感じました。
それと小さな事ですが、服を着てフード被ったら人間のようにごまかせて、フードが脱げたら正体がバレる。というのは、ちょっと納得いかなかったのでひっかかりました。
フード被ったら誤魔化せるというのは物語上の「お約束」として許せても(スーパーマンの眼鏡的な)バレるとこでは、せめて体も見えていてほしかった。
思わず「それでこれまでバレてなかったんかい!顔は見えてたやろ!」と、つっこみました。
しかし名作です。大好きです。


C-051 銀狼タクロフ ヲヲクラゲ 7点

頁数が多すぎます。もっと短くした方がよいと思います。
絵のレベルや構図構成に難があり、読みにくい部分もありましたが、途中からのハラハラ感と仕掛けに気がついたときの「あうっ!」という嫌な予感。そしてそれが的中したときの絶望感とショッキングさに打ちのめされました。
しかもそれからの展開のさらなる嫌世感に、正直二時間ほど寝込みました。
ちょっとトラウマになりそうなくらいけっこうショックでした。
それをどう評価するかですが、僕はこれも有りだと思います。
ただ、ショッキングシーンを山場とすると、以降は、獣同士があっさりと片がつき、それ以降の隣村との話が冗長すぎる。あのラストも意味はわかりますがナレーションであっさり語られるだけで、山場からどんどん尻すぼみになった気がします。
尊重のあのキャラ代わりもさして意外性がない。終盤は「ああ、人間ってそんなものよね」で言い尽くされてしまう感じがします。
しかしあの裏切り山場までの展開は、ぞくぞくするほどすごくて素晴らしい才能と挑戦だと思います。今後にさらに期待します。


C-071 ホッカイダーズ バズ 8点

以前も北海道のバイク旅をお書きになってましたね。これまで「旅ルポ漫画」色が強かったものにストーリーやドラマを乗せてきたというところでしょうか。
僕は過去に似たような経験をしていたので、て違和感無く、本当にあった事なのかもしれないと思いましたが、ドラマのパーツが「子供との行きがかり上しょうがない旅もの」「父親の喪失」「一夏のふれあいと成長」という割とベタで、しかもトントンと手際よく描かれているので「作り話」めいて「ご都合主義的」展開に受け止められるかもしれません。
以前の「ルポ漫画」で楽しく伸び伸びと描かれていたので、よけいにそう思うのかもしれませんが「ルポ漫画」よりも、この路線の方が間口が広いので一般雑誌的むけに「受ける要素」は増えています。
もう少し展開や見せ方具材を選べば「深夜食堂」などの定番の人情話を「北海道へのバイク旅」を舞台に、シリーズ化できる可能性があり、ご自身の作品世界を広めるとば口として成功していると思います。この線でいくつか描かれてみてはどうでしょうか。
分量も他ほど長くないですが、もう少し詰められると思います。

 
E-041 ふたりはオナニスト あまの 7点

突き抜けた素晴らしい変態性とお馬鹿性。
素晴らしいです。変態ってステキ!と思わず叫ばせる何かがあります。
そして、なぜアソコから中国語?脈絡なさすぎで噴き出しました。
あーなんで選んじゃったんだろう。他に良くできた作品はあるのに。
まぁなんらかの力があるから仕方ない。変態力の勝利かな。
 

E-042 裁判マン あまの 9点(☆大賞推し次点です)

えっと、まず驚きました。
えええええええ!「ふたりはオナニスト」と同じ人なのぉおおおお!
どんだけ作風の振り幅大きいんだよ。あー驚いた。
こちらは司法修士制度をよく調べ上げ(というか法曹界の中の人でしょうか?)
わかりやすく表現し、ほぉおおと思わせるうんちくもたくさん盛り込み、かつ中でも「裁判官」という仕事の本質を問いかけ、ちゃんとその結論を出す。という見事な話になっています。主人公の「葛藤」「選択と覚悟」も、逆転のアイディアも素晴らしい。
せりふのセンスもいいですね。
ちょっとテキストの全体量が多いですが、ネタがネタだけにしょうがないでしょうそれでもうまく整理されていると思います。
このまま商業誌のどこに載せてあっても、映画になってもおかしくないばかりか、名作との評価を受けると思います。
こう言っては失礼かもしれませんが、佐藤秀峰さんと作風とかテーマとか、少し似ているにおいがします。文句なし。お見事です。
 

E-049 Ghost Piano 近藤笑真 9点(☆大賞推しです)

格調高い名作ですね。
映画「アマデウス」のような「天才とそれを理解する凡才」というテーマをはらみつつ、支え合うという意味や必要とされる事の意味。
過酷な世界の時代の波に翻弄されながらも、近くにいても遠くにいても意識し支え合う二人の姿に感動しました。間に合って、一緒に暮らせて本当に良かった。
ラストも最高でした。語りすぎずに語り尽くしてあり涙が出ました。
普通に一読者としてとても感動しました。
一遍の名作短編映画を見た思いです。世の中にはすごい才能の人がまだまだいるものですねぇ。ごちそうさまでした。


E-074 Graphic Melancholy 西野杏 8点

西野さんは、この賞のもはや常連だけど、今回は本気だしてきたな。という感じ。
たぶん、ご自分でデザインされたグラフィックポスターをネタに持っててくる。といのはじつは漫画家としてもデザイナーとしてもすごく怖いことだと思うんです。
たとえば漫画家が「絵画」をネタにして「素晴らしい絵画」を実際に描かなきゃいけないわけです。これは怖い。
映画で「誰も聞いたことがない素晴らしい音楽や歌声」を描くとすればそれ相応の納得するミュージシャンを連れてくるか「ベック」のような音を聞かせない手法をとる事が多いのではないでしょうか。
それをあえて伝家の名刀を抜いて自分のデザインで勝負するという勇気に敬服しますし僕は、ちゃんと説得されました。
これまではデザイン性が高くおしゃれな画風で、最初からCGで実線が入ってきていたので、一部から他作品は、ネームで応募なのにという批判もあったようだけど、個人的には、CGなんだからしょうがないじゃない。内容重視で見ているし、と思っていた。
だからというわけではないのかもしれないが、今回は荒削りでラフな感じの手書き線なのかな?こちらもいいじゃないかと思います。好きこのみで言えばむしろこちらの方がぬくもりや熱が伝わってすきですね。ちょっと長いですけど内容もしっかりまとまって、定番の女性のお仕事ドラマ。天才的に仕事ができるあこがれの上司と、不器用ながらがんばりやの新人という布石ながら、あいかわらず上手に見せています。
また今回はシャレオツな作風とストーリーだけではなく、孤高で誰ともなれ合わずとも、やるべき事をやるべきか。チームや会社の和を尊しを重視するか。という、会社員にもアーチストとしても共通する「葛藤」をテーマにして良い掘り下げがしてあります。
そのテーマを主人公の過去と上司とのキャラ対比もそれを浮き彫りにするうまい描写。
しかし解決編に入り、頭脳と、がんばりとで突破しているので、なんだハナから出来る子なんじゃない。もとのポテンシャルそのものが高いんじゃない。
という印象になってしまいます。そこがもったいないかな。
作者の頭がよくて、ちゃんと考えて、穴がないようにアイディア使いすぎ。
なるほどこれならプレゼン突破できるよな。と納得しすぎちゃう。
そして確かに説得力あるけど、あまり奇抜じゃない。
しかも事後「よくある手法」と上司にも言わせてしまっている。
照れなんでしょうけど、少しいいわけくさい。
もっと主人公はもっと馬鹿に愚直に、孤高になっても一点突破しようとしたら、意外に周囲が、それほど孤高を貫く覚悟があるのなら。とフォローする気になる。あの子のアラは私たちが、俺が埋める。だけの方が良かったのではないかと思います。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、馬鹿が孤高を覚悟で馬鹿をやろうとするとき、人は意外にフォローしてくれるもんだし味方も現れる。
というのが、テーマに一番則した答えだったのではないかと思います。
その部分も描かれているのに、逆に主人公の用意周到さがそれをじゃましているような。
これは好きこのみもあり、ドラマの「重版出来」でも主人公の猪熊さんが無骨で不器用に描かれていて、よく引いてみるとむちゃくちゃ新人のくせにポテンシャル高いじゃん。
というつっこみがプロ作家の中から多かった現象と同じで「気づく人は気づく」だけなのかもしれませんし、逆に僕が言うように描くと、中には「馬鹿な主人公が嫌い」「主人公のわがままが嫌い。世の中そんなに甘くない」という意見もあるので一概にはいえないでしょう。
しかしこれは個人的な考えですが、物語の中くらい馬鹿がみたいじゃないですか。
「世の中に一人くらいは、こんな馬鹿がいないとつまらない」そう思える馬鹿が。
利口ばかりの世の中じゃあ、つまらないじゃないですか。
奇跡的な出来事、滅多にない事があってほしいじゃないですか。
世の中に有り難い。ありえへん。事を描いた「物語」を見るとき、人は「ありがたい」と思うのではないでしょうか。
ここまで積み上げて作り込みすべての要素は入っているのに、そこが、もう一歩、踏み切れなかった気がします。
西野さんは、これだけ頭がよく、うまく物語を重ねられるのですから、いったん積み上げて、あえて間引く。
足し算から引き算の書き方にそろそろ移った方がいいのではないかと思います。
ご自分では説明不足と思えるくらいになってもいい。
半分、三分の二に間引くだけでもぐっと作品濃度が上がると思うのですがいかがでしょう。ともあれ、このまま商業誌に載っていてもおかしくないし、逆にこれくらいの方が女性向けでは好感がもたれるかもしれません。
前述の「重版出来」も「校閲ガール」も「実は馬鹿じゃない」のが、評価高い面もありましたしね。「グラフィック・ガール」とかでドラマ化してもおかしくないかも。
漫画化と同時に、映像化企画として持って行っても良いと思います。

 

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